表紙絵

異世界伝奇譚
☆創世の竜〜第1章 百影夜行(ひゃくえやこう)

written by 凧耶

〜序章〜

 代、人が人となってから、だいたい平安時代と呼ばれたころまででしょうか、
 西洋ではもっと早くにいなくなったようですが、『物の怪』というのがいました。
 最近でも夜中の田舎道や山道ではたまに見られます。
 人々のケガレ、悪意の念が塊になって形を持ったもので、だいたい人に悪さをします。
 でも、人の悪意なんかは大して変わらないはずなのに現代では絶滅寸前です。
 その理由は至極簡単で、『物の怪』は、その姿を変えて別の場所に引越しをしたのです。
 本来『物の怪』というのはマイナス思念の具現ですから、よりマイナスなものにその姿を変える訳です。
 昔は、獣や死者の霊を恐れたから、目に見える生き物みたいな『物の怪』が
 いっぱい生まれたんですが、今じゃ、幽霊より会社の倒産なんかの方が怖がられている。
 (といっても、正確な資料なんかあるはずないので漠然とした対比しか出来ませんが。)
 とてもじゃないが、お話にもならないでしょう?
 まあ、そんな『物の怪』のことをご理解いただいた上で話を進めましょう。

『物の怪』が未だに『物の怪』であり、

『物の怪』を『影』と呼ぶ、

 異世界『久遠』の物語。

 始まりは、『こちら』の世界の或る街角。

 ・・・・・では、物語を始めましょう。

〜或る愚かな哲学者の独白〜

全ては正しい。
正義も悪もどこも間違ってはいない。
この世に間違っているものなどないのだ。
もし、間違いがあるとすれば、
それは、この世界そのものなのだろう。
間違いは、正すべきだ。
もしも、それを間違いと断定できるほどの
『なにか』
があるならば、の話だが・・・

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